突然ですが、皆さんは普段、何気なくインゲン豆を食べていませんか?
実はあの豆は、黄檗宗の開祖である隠元禅師が、江戸時代に中国から日本へもたらしたものです。隠元禅師は豆だけでなく、机を囲んで大皿料理を分け合う普茶料理など、私たちが日常で使う文化を日本に伝えました。
黄檗宗の教えの特徴は、このように日々の暮らしや目の前の行動と深く結びついている点にあります。
万法唯心(まんぽうゆいしん)という教えがあります。
世の中のすべての現象や出来事は、すべて自分の心が作り出しているという意味です。
例えば、目の前に一枚の鏡があると想像してください。
鏡そのものは、ただそこにあるだけです。しかし、私たちが怒った顔で鏡を覗き込めば、鏡は怒った顔を映します。笑顔で覗き込めば、笑顔を映します。
世の中で起きる出来事も、これと同じです。
雨が降ったとき、あ~、嫌な天気だな、と不満に思うか、植物が喜ぶ恵みの雨だなと感謝するか。出来事は雨という一つだけですが、それを受け止める私たちの心次第で、世界は天国にも地獄にも変わるのです。
現代の私たちは、スマートフォンやインターネットを通じて、毎日数え切れないほどの情報や他人の言葉に触れています。
気がつけば、誰かの意見に一喜一憂し、心が波立って、鏡の表面が泥で汚れてしまうような日々を送ってはいないでしょうか。
黄檗宗の修行では、お経を中国の古い発音(唐音)で、リズミカルに、そして力強く唱えます。また、儀式の合間には様々な楽器を鳴らします。
これは、五感のすべてを使って、「いま、この瞬間」に集中するためです。過去の後悔や未来の不安に心を奪われるのをやめ、ただ「いま、ここ」にある自分を見つめ直す。それによって、泥で汚れた心の鏡をきれいに拭き清めるのです。
心の鏡が磨かれれば、目の前の出来事をあるがままに、穏やかに受け止めることができるようになります。
一度立ち止まって、ご自身の心の鏡を覗いてみてください。そして、ほんの少し息を深く吸い、いまの自分を優しく認めてあげてください。皆さんの心が穏やかであれば、皆さんの周りの世界も必ず温かいものに変わっていきます。
黄檗宗
豊運寺 井上 正徳