「ありがとう」何ともさわやかな言葉であります。日本語の中でも、最も美しい言葉の一つではないでしょうか。語源は『法句経』の「ひとの生をうくるは難く、やがて死すべきものの、今、いのちあるは有りがたし」だと言われています。この法句経の言葉は、「ありがとう」という言葉のもつ二面性を実によくあらわしております。一つは文字通り、「有ること難し」つまり、めったにないという稀有性を示しております。さらに一つは、それを「尊い」ものとして受けとっていく尊厳性の意味であります。
民俗学を創始した柳田国男さんの『毎日の言葉』によりますと、この「ありがとう」という言葉は、最初は、人間の力を超えた神仏の徳や霊性をたたえたもので、次には、何か喜ばしいこと、嬉しいことがあったときに使われたが、やがて、人と人とのあいだのお礼の言葉として使用されるようになったのだと言われております。
「ありがとう」そう呼び交わすだけで、そこにささやかな花園が生まれそうな気がいたします。与えられた喜びを素直に「ありがとう」と感謝し、人との縁を「ありがたし」と受け止めて、一期一会の喜びに生きていきたいものです。
合 掌
真言ぼだい会発行『ぼだい』誌より
真言宗醍醐派 明王山不動寺
草柳諦世